過激派「中核派」の現在地|アジト潜入取材で浮かび上がった真実
中核 派――その名を聞いて、昭和の激しい街頭闘争や鉄パイプを振るうヘルメット姿の集団を思い浮かべる人は少なくないだろう。しかし、元号が令和に移り、治安対策が極限まで高度化された現在も、この組織は消滅するどころか密かにその息吹を保ち続けている。重々しい鉄扉の向こう側で、彼らは今何を考え、どのような社会を目指して動いているのか。静まり返った東京都江戸川区の一角にある活動拠点へ足を踏み入れると、そこには外部の人間が知る由もない独特の空気感と、令和の時代における新たな現実が広がっていた。
かつて爆破事件や過激なゲリラ事件を繰り返した歴史を持つが故に、捜査当局の視線は今なお鋭い。街頭でのビラ配りから内部の意思決定の仕組みに至るまで、中核 派の動向は常に警察の警戒網によって網羅されている。だが、単なる「過去の遺物」として切り捨てるには、彼らの組織網はあまりにも深く強固に根を張っている。
厳重な警戒の壁を抜けて:アジト「前進社」潜入取材の裏側

都心の喧騒からやや離れた住宅街。無機質な鉄筋コンクリートの建物が、異様な存在感を放っている。過激派組織の「公開アジト」であり、同派の発行物や機関紙を印刷・発送する拠点前進社だ。監視カメラが至る所に設置され、インターホン越しに厳重な身元確認が行われる。緊張感は、足を踏み入れた瞬間に最高潮に達した。
扉が開くと、外観の威圧感とは裏腹に、内部には印刷インクの匂いと積み上げられた書類の山が広がっていた。規則正しく配置されたデスクでは、老若男女の活動家たちが沈黙のうちに作業を進めている。外部からは窺い知ることができない彼らの日常生活の裏側。そこには、暴力的なイメージだけでは説明しきれない、徹底した組織管理と生活様式が確実に存在していた。
本多延嘉から清水丈夫へ:過激派を率いた歴代幹部の系譜
この組織の歴史を語る上で避けて通れないのが、組織の正式名称である革命的共産主義者同盟全国委員会の変遷だ。過激な理論的柱を築き上げ、内ゲバ抗争の激化の中で1975年に非情な死を遂げた指導者・本多延嘉。彼の遺志と理論は、その後長きにわたり組織のドグマとして受容されてきた。
さらに、半世紀近くもの間潜伏生活を続け、都市伝説とまで囁かれた最高幹部の清水丈夫が突如として姿を現したニュースは記憶に新しい。地下に潜り潜伏を続けた伝説的な指導者たちが、どのような思想的変転を経て現在の運動を指揮しているのか。指導部の若返りが叫ばれる一方で、旧来のカリスマ的幹部が持つ影の影響力は今もなお組織の根底に色濃く残っている。
警察庁警備局と公安調査庁が注視する2026年の警戒態勢

治安当局にとって、彼らは決して過去の脅威ではない。警察庁警備局は全国の警察本部と連携し、秘密アジトの洗い出しや違法活動の監視を日夜強めている。秘密潜伏拠点の捜索や資金ルートの解明など、国家の治安維持機構は今この瞬間も手緩い姿勢を見せることはない。
また、内外の破壊活動や治安情勢を分析する公安調査庁も、彼らの動向を厳重な監視下に置いている。暴力革命の方針を完全に放棄していないとされる以上、当局側にとって警戒を緩める選択肢は存在しない。表向きの穏やかな市民運動や労働運動への浸透工作の裏で、どのような地下組織が動いているのか。公安当局と過激派との目に見えない攻防は、サイバー空間やSNSの波をも巻き込みながら新たな局面を迎えている。
SNSでZ世代を引き寄せる?若手メンバー参入の最新動向
いま、最も注目すべき変化は「若返り」の試みだ。昭和の学生運動を知らないZ世代の若者たちが、なぜ今こうした組織に関心を示すのか。彼らはYouTubeやX(旧Twitter)、TikTokなどのSNSを駆使し、学費値上げ反対や労働環境の改善といった身近なテーマを口実に若年層へアプローチを試みている。
かつてのヘルメットとゲバ棒というスタイルを隠し、ファッショナブルで洗練された言葉使いで若者の生きづらさに寄り添う戦術。ネット発の社会運動に混じり込み、自派の思想へと引き入れていくアプローチは一定の成果を上げているという。一見すると普通の大学生や若手労働者が、気づけば深みにはまっていく構造。潜入取材の現場で目撃した若者たちの表情は、冷淡なまでの純粋さと情熱に満ち溢れていた。
映像が映し出す異端の運動史:『三里塚のイカロス』とNetflixの視点
過激派や左翼運動の軌跡は、カルチャーや映像作品の文脈でも再評価と検証が相次いでいる。代表的な例が、成田空港建設反対闘争の渦中にいた人々の光と影を描いたドキュメンタリー映画『三里塚のイカロス』だ。かつて理想を掲げて闘った若者たちの熱狂と挫折、そして組織の暴走がもたらした悲劇を客観的かつ残酷に描き出した名作である。
近年では、Netflixをはじめとする大手動画配信プラットフォームにおいて、過激化する政治運動や地下組織の生態を追った政治・社会ドキュメンタリーの需要が世界的に高まっている。エンターテインメントとして消費される側面と、歴史の暗部を照射する試み。映像テクノロジーの発展によって、彼らの存在は単なるアングラな存在から、現代社会の病理を映し出す鏡として再解釈されつつある。
報道ジャーナリズムが問う「過去の遺物」ではない現在進行形のリアル
客観的な事実に基づき、社会の隠された側面を照らし出すのが報道ジャーナリズムの本来の責務だ。過激派の危険性や違法性を追及することは勿論重要だが、なぜ現代社会においてそうした過激な主張に引き寄せられる人々が絶えないのか、その根底にある社会的孤立や不満に目を向けることもまた不可欠である。
地下組織の潜伏、治安当局の監視、そして新たな若者の参入。表層的なニュースだけでは見えてこない過激派組織の「今」は、現代社会が抱える不安の深さを物語っている。彼らを単なる特殊な集団として切って捨てるのか、それとも社会が生んだ歪みな産物として直視するのか。過激派の取材を終えた今、私たち自身に突きつけられている問いは重い。 (出典: 中核 派(Yahoo!ニュース))